想いは、香りとともに

20代の頃、70代の方が私に授けてくださった言葉です。

その方は軽い認知症と診断されていましたが、いつも本を読んでいて博学で、口数も少なくどこか周りとは違う雰囲気を持っていました。

時々、不安が強くなることもありましたが、佇まいはいつもエレガントで、若かった私は「もしかして、認知症のふりをしているのでは?」と思うことさえありました。

金木犀の香りがするある年の10月。

その方を送迎で家までお送りした帰り際、「車から見える景色が秋に変化してきましたね。」と言う話から

歳月は一瞬、想いは永遠だわね。」と言われました。

私は、その言葉がなぜかとても記憶に残りました。

その日の夜、その方は心筋梗塞で亡くなり、私は2日後にその知らせを受けました。

お葬式で、あの時の言葉がまるで私への最後の挨拶のように感じられたのを覚えています。

当時の私は、「歳月人を待たず」というような意味だと思っていました。

けれど、歳を重ねた今はこう思うのです。

亡くなった方と過ごした歳月は一瞬かもしれない。

けれど、気持ち(想い)というものは、その人と出会った人が生きている限りずっと生き続けますという意味だったのかなぁと、、、。

金木犀の香りがすると、私はその方を思い出しています。

10月最後の週、季節のゆらぎを楽しみながら、11月を迎えられるといいな。

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